先日の記事で、ロースクール(以下、「LS」)に合格したことを報告いたしました。
最近法律の勉強を始めた方の中には、LS受験も視野に入れている方もいらっしゃるかと思います。
今年、実際にLSを受験してみて、色々と感じたことがありました。
受験前に知っていればよかったなと思えたこともありましたので、来年度以降、LS受験をする方に向けて情報提供を目的として本稿を書くことにいたしました。
来年度以降のLS受験をする方、特に社会人受験生の参考になれば幸いです。
出願するコースの選択
LS制度についてご存知の方には言わずもがなな情報かもしれませんが、改めて確認しておきます。
現在では、LSは2つのコースを用意しています。
- 既修コース(2年履修課程)
- 未修コース(3年履修課程)
の2つです。以前は未修コースのみを設置しているLSもありましたが、現在では既に廃校になっております。
どちらのコースを選択するか?
Twitterで観測している限りのデータになってしまいますが、既修コース(2年履修課程)を選択する人が多いです。
もっとも、元々法曹志望の大学生や、予備試験を受験している方々ばかりを見ているため、既修コース(2年履修課程)を選択するというのは必至となりますが。
もちろんを選択している人もいらっしゃいます。
- 学部は法学部だが、既修の入試に合格できる自信はないので未修を選んだ
- 社会人で法曹志望だが、勉強を開始して間もないので、未修を選んだ
といった方々です。
自分は、元々法学部卒ですし、司法試験合格を目指して勉強をしていたということもあって、既修一択で受験することにしました。
なお、現在は併願できるところも多くあり、併願で受験されている方も一定数いらっしゃいます。
今回2校受験しましたが、いずれも併願が可能となっておりました。もっとも、上述の通り、既修一択だったので併願はしませんでした。
未修に入学するべきではない問題
未修に行くぐらいなら、1年勉強して翌年の既修を受験して入学すべし
この話はTwitter上でもよく出ておりました。
というのも、未修での入学者の司法試験合格率の低さを問題視したコメントで、純粋な未修者が1年間で既修者と同等の知識や能力を身につけることは難しいということを表したものです。
実際、未修で入学したものの、別のLSを既修で受験し直し、入学したという方もいらっしゃいました。
上記の問題について、ここで結論を示すことはできませんが、未修コースでの受験・入学を考えている方は、入学してから後悔しないよう、出願前に一度考えてみた方がよいかと思います。
出願するLSの選択
次に、出願するLSの選別になるかと思います。多くの方は、「司法試験の合格率が高いLSに行きたい」という観点から受験するLSを選別することになるかと思います。
中には、合格率という基準ではなく、「環境がいい」とか、「カリキュラムが魅力的」とか、そういう観点で選ぶ方もいらっしゃるかと思います。それはそれで良いのではないしょうか。他人がとやかくいう筋合いのものではありません。
ちなみに、自分の場合ですが、合格率というのを全く気にしなかったわけではありませんが、それよりもLSの設備面や雰囲気、教育体制等を見て決めました。結局、自分の出身大学のLSに行くことにしたのですが、理由は、出身大学なので知っている教員がいることや雰囲気が自分に合っていると感じたからです。
LS入試の合格戦略
LS入試の合格戦略として、感じたことがありますので、以下に記載いたします。
LSが主たる対象としているコースとマッチしているか?
まず、LSが主たる対象としているコースと自分が選択したコースがマッチしているか?ということです。
自分の戦績は1勝1敗でした。この1敗を浴びせられたLSですが、未修者をメインにしているLSだったのです。
つまり、未修コースの方が募集人数が多いということです。
そうなると、既修コースの合格者数自体、かなり絞られます。言い方を変えれば、採点基準が厳しくなったり、合格水準を上げられたりして、合格することがそれだけ厳しくなるということです。
以上の経緯から、合格戦略としては、自分が選択したコースにマッチしているLSを選ぶべきということになります。
- ご自身が進学を希望するLSが既修と未修、いずれをメインにしているか
- ご自身が希望するのは既修と未修のいずれか
受験料を無駄にしないためにも、出願する前に一度考えてみた方が良いかと思います。
予備試験短答式試験の合格歴がプラスに扱われるか?
LS入試では、提出するパーソナル・ステートメントで「能力を証明する資格」といった記載が求められるところもあります。
この「能力を証明する資格」では、例えば
- 司法書士として実務に就いている
- 医師免許を有している
といった国家資格+実務に従事していることを評価するLSもあれば、
- 司法試験や予備試験短答式試験の合格歴
を法的知識を備えているとして評価してくれるLSもあります。
予備試験の短答式試験に合格していない場合には、これを評価しないLSに出願すれば、書類上はハンデなしで戦うことができるので、合格する可能性が高まります。
正直、私立は全く受けていないので、私立がどのように評価しているかは存じ上げませんが、国公立では、東日本側は評価してくれる傾向にあり、西日本側は評価しない傾向にあります。
ですので、短答合格歴はないけど、論文式試験には自信がある!という方は、西日本側のLSを中心に受験するというのも合格戦略としてとりうると思います。
スケジュールについて
LSを受験される方は、大多数が大学受験を経験されていると思いますので、暗黙知ではあるかもしれませんが、大学受験に言えることはLS受験でも当てはまります。
やはり試験日程は考慮した方がよいかと思います。LSは1日拘束される試験です。LSによっては2日拘束されます。*1
また、既修・未修を併願した場合でも2日拘束されることになります。
若い大学生ならまだいいと思いますが、歳をとった社会人受験生には確実に疲労が蓄積されます。また、受験すればするほど受験料は嵩みますし、合格しても、日程が合わないと入学金を放棄しなければならない可能性もあるわけです。
ですので、試験日程や入学手続期間の重なり合いはしっかり確認した方がよいかと思います。
2023年度入試の実績
2023年度入試(2022年に実施した試験)での話になりますが、私大は重なるところは少ないのですが、国公立では同じ日に実施していたり、翌週に実施されたりとタイトなスケジュールとなっていました。
例えばですが、
- 10月29日:都立大、名大、阪大
- 10月30日:北大、東北大、九大
- 11月12日:東大、一橋大、京大(1日目)
- 11月13日:京大(2日目)
- 11月19日:神戸大
といった感じで、重複していたり、連続していたりしていました。
ちなみに、受験生の中には、
- 阪大を受験した後、福岡に移動して九大を受験した
という方もいらっしゃいました。
なかなかタフな方ですね。
2024年度以降の入試について
2024年度入試では変更が生じるかもしれません。というのも、2022年は、予備試験の口述試験が2021年以前よりも遅くなったためにLS側が日程変更をせざるを得なくなったためにこのようなスケジュールになったのかと思います。
2023年の予備試験の実施は、短答が7月、論文が9月、口述が1月となっています。
ですので、LSも試験日を変更してくる可能性が十分に考えられますので、上の例は参考程度に留めておいてください。
いずれにしても、無理なスケジュールを組めば、それだけ対策に割ける時間も減ってしまいますので、十分注意したいところです。
予備試験合格者との競争を避ける
上位LSに行きたいという方は別ですが、どこでもいいからLSに行きたいという方は、予備試験合格者との競争を避けることも戦略としてアリかなと思います。
上述のように、2023年以降は日程が変更になる可能性があるため断言はできませんが、今年の東大LSの結果を見ていると、予備試験の論文試験に合格した方々が東大LSの合格の椅子も持っていっておりました。
つまり、上位LSでは、予備試験の論文試験に合格する力のある人たちとの中で競争をしなければならないということになります。
倍率が2.5〜3倍とはいえ、そのような猛者たちと勝負をしなければならないのはなかなかしんどいと思います。
ですので、あえてそのような猛者たちが受けないようなLSを受験して合格を得ておくというのも一つの戦略だと思います。どこか1つでも合格していると精神的に楽になりますしね。
ちなみに、論文試験合格者が受験していたのは、東大LS以外では、京大、阪大、慶應、早稲田、中央あたりで観測しました。
さいごに
以上、実際にLS受験を経験してみて感じたことを文字にしてみました。
これからLS受験をする方々は、LSについて色々と検索をしてみるかと思います。ですが、想像以上に情報が出てこないことにも驚くかと思います。司法試験や予備試験に関する情報は色々と出てくるのですが、LSに関する情報というのはなかなか出てきません。
そんな中でも、LSに関して情報を発信してくださっている方がいらっしゃいますので、その方のTwitterアカウントのリンクを貼っておきます。
藤澤さんの発信は、定期的にチェックして損はないと思います。
それではー!
*1:京大LSや早大LSなど