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2025年司法試験(公法系)の難易度をAIに評価させてみた

2025年の予備試験論文試験の問題をAIに評価させてみた記事を公開してから、1か月以上が経ってしまいました。

すぐさま、司法試験の方も公開するつもりだったのですが、腰が重くなってしまいまして……

ですが、もう直ぐ合格発表の日を迎え、その後、出題趣旨が公表されてしまいます。

そうなってしまっては、AIの実力が測れない……その前に公開せねば!と思い、再び筆をとるに至りました。

また、私自身が合格できていれば筆をとる気になって、合格発表後も記事を公開するであろうと思われますが、ダメだったときには再び水面下に潜ってしまう可能性があります。そうなった時の保険として、合格発表前に公開した方がよいとも考えたので、執筆しました。

さて、今回の記事の目次は、以下の通りとなっています。

それではどうぞ!

憲法

まずは憲法です。以下は、断りがない限り、Geminiの回答です。

総合難易度

難易度:★★★★★ (極めて難しい)

これは、単なる知識の暗記では全く歯が立たない、思考の深さ、正確さ、そして戦略性を問う、司法試験の憲法としてトップクラスの難易度を誇る問題です。予備試験の問題が「知識と基本的な思考力を問う」ものだとすれば、この問題は「法的な思考のセンスと成熟度を問う」ものです。 以下、施策ごとに難易度を分析します。

施策①:強制投票制度について

難易度:★★★★☆

この施策は、(a)投票の義務化と、(b)選挙権の停止という、性質の異なる2つの論点を含んでおり、それぞれに高度な思考が要求されます。

(a) 投票の義務化
  • 難しさの根源 「投票しない自由(棄権の自由)」という、判例の蓄積がほとんどない、極めて理論的な論点を、憲法の基本原則から自力で論じなければなりません。

  • 思考のプロセス 受験生は、棄権の自由が思想・良心の自由(19条)や表現の自由(21条)の消極的側面として保障されることを論証した上で、それと「議会の民主的正統性の確保」という極めて重要な公益とを、どう衡量するか、という難しい判断を迫られます。これは、判例を貼り付けるだけでは済まない、真の思考力が試される部分です。

(b) 選挙権の停止
  • 隠された罠 一見すると、単なるLRA(より制限的でない他の手段)の問題に見えます。対話文中の「罰金」が代替手段として提示されており、多くの受験生はそちらに飛びつくでしょう。

  • 真の論点 しかし、この論点の核心は、「選挙権の制約が許されるのは、原則として『選挙の公正』を確保する目的の場合に限られる」という、選挙権に関する判例の射程を正確に理解しているか、という点にあります。「有権者に投票の重要性を再認識させる」というパターナリスティックな目的で、民主主義の根幹である選挙権そのものを制約することが、そもそも許されるのか。この論点に気づけるかで、評価は大きく分かれます。

施策②:街頭演説における聴衆の行為規制について

難易度:★★★★★

こちらが、この問題で最も難しいパートです。出題者は、巧妙な罠をいくつも仕掛けています。 + 「明確性・過度広汎性は論じるな」という指示 これにより、多くの受験生が得意とする「表現規制の典型的な文句」が封じられます。これにより、受験生は、より実質的な議論へと足を踏み入れざるを得なくなります。

  • 真の論点(隠された最大の罠) この規制の最大の憲法上の問題点は、対話文の中に巧妙に隠されています。それは、「中止命令の発動に『主催者の要請』が必要」という仕組みがもたらす、ビューポイント規制(論点差別)の危険性です。

法律の文面は中立(不穏当な行為の禁止)に見えても、その運用上、主催者は自分たちへの「ヤジ」に対しては中止を要請するが、自分たちへの「応援」に対しては要請しないでしょう。その結果、この法律は、実質的に、政権(演説者)に批判的な言論のみを狙い撃ちする形で運用される危険が極めて高いのです。

この「一見中立だが、運用上、特定の意見を不利益に扱う」というビューポイント規制の問題に気づき、それを的確に論じることができる受験生は、ごく少数でしょう。これが、この問題の合否を分ける最大のポイントです。

総評

この問題は、 1. 対話文の中から法的な争点を正確に抽出する読解力 2. 判例の結論だけでなく、その射程や限界を深く理解する知識の正確性 3. 判例のない論点を、憲法の基本原則から構築する理論的思考力 4. ビューポイント規制のような、高度で複雑な論点を見抜くセンス

といった、法律家に求められるあらゆる能力を、極めて高いレベルで要求しています。間違いなく、近年の司法試験の中でも屈指の難問と言えるでしょう。

私見・感想

概ね適切な分析かなと思いました。

施策②について、問題文では、特にそれ以上のツッコミがされていなかったので内容中立規制であることを前提にしてしまったのですが、Geminiとの対話を重ねていった中で、それは出題者からの罠だったのではないか?という見解が示されました。

たしかに、Geminiのいう通り、実質的には内容規制だよねって話に持って行ければ、審査密度が上がるので、より綿密な検討を行うことになったと思いますが。

しかし、ワタクシの実力では、2時間という試験時間の中で気づき、さらに答案に落とし込むのは困難でした。実際、書き終えたのも時間ギリギリでしたし。

非常に勉強させられた分析結果でした。

行政法

つづいて行政法です。

総合難易度

難易度:★★★★☆ (星4つ)

この問題は、近年の司法試験の傾向を色濃く反映した、非常に練られた良問であると同時に、受験生に多くの能力を要求する難易度の高い問題であると言えます。単に知識を知っているだけでは太刀打ちできず、総合的な法的能力が問われています。

以下、その理由を具体的に解説します。

難易度が高いと評価する理由

1. 高密度な情報処理能力の要求

まず、問題文の情報量が非常に多く、複雑です。受験生は、

  • 事案の時系列(養鶏場設置、Cの入院、悪臭測定、勧告、指示…)
  • 複数の法令(悪臭防止法、B市生活環境保全条例)
  • 誘導文の役割(法律事務所の会議録)

という3つの異なるレベルの情報を、短時間で正確に読み解き、有機的に結びつける必要があります。特に、勧告事項が3つに分かれているため、それぞれの事実関係と法的根拠を正確に対応させる情報整理能力が不可欠です。

2. 深く、かつ具体的な判例知識の要求

本問は、行政法の一般的な知識だけでは解答できません。【法律事務所の会議録】の中で、事実上、2つの重要な最高裁判例を挙げることで、それらの判例の理解度を直接的に問うています。

設問1(1)(処分性)

病院開設中止勧告事件(最判平17.7.15)の射程を正確に理解し、その判断枠組みを本件の「勧告」と「指示」に適用できるかが問われています。

設問1(2)(差止めの訴えの利益)

教職員懲戒処分差止め事件(最判平24.2.9)が示した「重大な損害」の判断基準を正確に理解し、本件の「公表」による不利益に適用できるかが問われています。

これらの判例を単に知っているだけでなく、「なぜその結論になったのか」という理由付け(ロジック)まで深く理解していないと、説得的な答案を作成することは困難です。

3. 多角的・重層的な法的分析能力の要求

各設問で求められている法的分析が、一筋縄ではいきません。

設問1(1)

「勧告は処分ではないが、指示は処分である」という特定の結論を、反対意見にも触れながら論証することが求められます。単純な結論を示すのではなく、両者の違いを際立たせる多角的な分析が必要です。

設問2

「勧告」に含まれる3つの事項それぞれについて、個別に違法性を検討しなければなりません。それぞれ「Cが居住者か(条例29条2項)」「立入検査拒否は条例違反か(条例32条)」「規制基準以下でも生活環境を損なうおそれがあるか(条例32条)」といった、異なる角度からの緻密な法令解釈が求められます。

4. 「誘導」が逆に要求水準を引き上げている

【法律事務所の会議録】という丁寧な誘導があるため、一見すると親切な問題に見えます。しかし、これは「論点は全て示してあげたので、その分、質の高い分析をしてください」という出題者からのメッセージでもあります。

論点を探す必要がない分、受験生は判例のロジックを正確に適用し、問題文の事実を丁寧に拾い上げて評価するという、分析の「質」で差がつくことになります。このため、生半可な理解では、誘導があることがかえって答案の質の低さを露呈させてしまうという、厳しい側面も持っています。

総括

この問題は、法的知識の正確さに加え、情報処理能力、判例の深い理解、多角的な分析能力、そして時間内にこれらを処理する戦略的思考力といった、法律実務家に求められる能力を総合的に試す、非常に優れた問題です。

したがって、難易度は「高い」と評価するのが妥当でしょう。この問題を時間内に質の高い水準で書き切ることができれば、行政法については相当な実力があると自信を持ってよいと言えます。

私見・感想

2024年では、問題文の形式に面くらいましたが、2025年では、従来の形式に戻ったというのがぱっと見の印象でした。

ですが、問題の量が多い。Geminiも指摘していましたが、誘導が難易度を上げている……というよりも、誘導が論述量を増やしていると言った方が正確なのかもしれません。触れなければならない点が多いので、これを網羅的に言及しなければならない。設問1(1)は、実質的に2問ですし、設問2は、違法事由3つ書かなければならないのでえ、実質的に小問が3つあるような状況でした。

時間的には非常に厳しい。

その他、本問では色々と話したいことがありますが、Geminiの分析に対する感想としては、概ね妥当ではないか、という結論を出しています。

さいごに

Gemini、公法系では比較的まともな分析をしてきます。予備試験の民事系や刑事系では誤った判例の理解を示してきたり、判例を捏造してきたり、ということがあったのですが、公法系ではその傾向はあまり見られません。

ただし、今回の投稿とは別件で、判例について議論をしていた際には、判例を捏造してきたことがありました。ですので、公法は大丈夫、とは言い切れません。

とはいえ、問題の分析自体は、上記の通り、概ね妥当だと考えているので、出題趣旨が発表された後、改めて比較してみようと思っています。

残りの民事系・刑事系についても同様に分析結果を紹介する予定です。

それでは!